グローバル・コモンズを守るための化学産業の役割
(1)日本の化学産業のネットゼロへの道筋と戦略を公表しましたNEW 2024.10
- 報告書のベースとなった査読付き学術論文はこちら
- 報告書の「1ページ要約版」はこちら
- 報告書の本文 (持続可能な地球の未来を築く日本の化学産業, Planet Positive Chemicals in Japan ) はこちら
- 難しいとされている化学産業の温室効果ガス排出のネットゼロを2050年までに達成するために、日本の化学産業が進むべき道筋や、日本の強みと弱みを踏まえた戦略について研究報告書にまとめました。
- 日本の化学産業はプラスチック等のリサイクルを最大化し、バイオマス由来原料とCCS(二酸化炭素の地下貯留)拠点の確保を加速する必要があります。なぜなら、ネットゼロの下では、これらへのアクセスが各化学企業や国が供給できる化学製品の総量を決めるからです。
- 新たな設備や原料の導入により、ネットゼロ化学品の製造コストは現状よりも大幅に増えますが、最終消費者向け製品の製造コストへの影響は極めて小さいと言えます。
- 本報告書では、ネットゼロ以外のサステナビリティの諸課題も踏まえた上で、日本の化学産業が果たすべき将来の役割についても提案しています。
- 本報告書の内容は、日本と同様の資源的制約を持つ他の国や地域にも適用できると考えています。
(2) 世界の化学産業のネットゼロを含めた将来像
- 世界の化学産業がいかにしてプラネタリー・バウンダリーズ注1内で活動し、スコープ1~3ネットゼロを実現する事業モデルを構築できるかを本報告書では示しています。
- 本報告書の本文 (Planet Positive Chemicals) はこちら
- COP27 (エジプト、2022年11月) のジャパン・パビリオンで行った本テーマに関するセミナーのビデオは、以下をご覧下さい
日本語版(フル)
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英語版(フル)
(3)研究の背景
素材産業の1つである化学産業は、有用な素材を広く社会に提供する一方で、温室効果ガス排出、海洋などへの廃プラスチックの流出、窒素・リンの循環、生物多様性の喪失など、プラネタリー・バウンダリーズ注1に関連する多くの課題にも関係しています。また、化学産業はバリューチェーンの上流に位置することから、自らの環境負荷低減に加えて、下流に位置する他の産業や消費者による環境負荷の低減に向けても多く役割を果たすことができます。
本研究では、化学産業の未来に向けた将来像を示し、化学産業がプラネタリー・バウンダリーズ内で活動し、スコープ1~3ネットゼロを実現する事業モデルを提案することを目指しています。具体的には、ネットゼロの世界における化学製品の需要をシステム全体で捉え、バリューチェーン全体における化学製品のGHG排出量を検討し、化学産業の将来の道筋と役割を示すことを目指しています。その前提として、化学製品が私たちの現代生活の中で遍く使用されていること、また、他の業界がネットゼロを達成する上で化学産業が重要な役割を果たすことを認識しています。
なお、本研究は三菱ケミカル株式会社からの支援のもとで、独立系システム・チェンジ企業である Systemiq社と共に行われています。(参考:グローバル・コモンズの保全に向けた東京大学と三菱ケミカルの共同研究について)
(注1) プラネタリー・バウンダリーズ (Planetary Boundaries):地球環境システムを安定化させている9つのプロセス(気候変動、生物多様性、窒素・リン循環など)について、人類が持続的に発展していくために超えてはならない限界値を定義したもの。これを超えると大規模で不可逆的な環境変化をもたらすリスクが大きくなるとされている。